【2019年版】美容業界を現役のプロが徹底解説
美容師でスタイリストを目指す方は、これからの美容業界のことについて、深く考えることでしょう。なぜなら休みが少ない「ブラック体質」であったり、「給与が少ない」という点は、否めないからです。
美容業界は、美容室の店舗が右肩上がりで増え続けておりますが、どの事業者も従業員の募集に悩ませており、その背景には、業界の古い体質があり、労働環境が悪く新しい社員も1~3年で離職する方が多いため、大変な業界であることは間違いありません。
しかし、美容業界は、AIやロボットに置き換わるわけではなく、おそらく数十年後も必要とされる職業です。ですから、美容業界の経営者は「労働環境」を改善し、多くの方が志す業界を目指さなくてはなりません。
本日はこの美容・理容業界で20年以上の現役である筆者が、最新のデータをもとに美容。理容業界について詳しく解説いたします。
美容室は全国で24万店舗で、右肩上がりで増え続けている!
まず、下記の表をご覧ください。平成10年(1998年)から平成27年(2015年)までに、日本全国の美容室の店舗数の推移表です。
◆美容室の営業施設数の年次推移(単位1000施設)
この表を見ると、店舗数が右肩上がりで増えていることがわかり、2015年には、日本全国で24万店舗に達しています。24万店舗がどれくらい大きい数といえば、あのコンビニも日本全国で5万7956店舗(2019年調べ)しか、なく、美容室はコンビニの4倍以上の店舗数があるのです。
厚生労働省の資料によると、5歳以上の人口を1億2000万人とすると、それを24万店舗でわると、1店舗あたりは499人をカバーすることになり、この数字は「1店舗あがり499人もいたら十分やっていける!」と思われるかもしれません。
しかし実際は、人気店に人が集中していたり、また床屋に行く方、QBハウスなどの低価格カットの方も多分に含まれますし、そもそもたまにしか美容室行かないかたも多く、そういった背景を考えると、一ヶ月の平均売上を100万円以上確保するのは非常に大変なことであり、かなりの競争激化が進んでいる業界だと言えます。
「美容師」の数も過去最高の52万人!増えて見えるが、実際は離職する人が多い業界
下記の表によると2018年度の美容師の数は過去最高の52万3543人に達しております。
※クリックすると拡大します。
上記表の引用記事:美容師数 | 理美容ニュース
つまり、24万店舗で働いているスタッフの平均は以下の計算式になります。
52万人 ÷ 24万店舗 = 2.1人(1店舗の人数)
実際にどれだけの方が「美容師免許」を取得しているのでしょうか?下記の表をご覧ください。
平成17年(2005年)をピークに美容師の免許を取得する方が減りましたが、平成24年(2012年)あたりから再び、美容免許を取得する方は増えております。2005年までは「カリスマ美容師ブーム」がおこり、美容師があこがれの職業の一つになりましたが、ブームが終わるとともに、美容師免許を取得する人は落ち着き始めました。
2012年あたりから増えて見えるのは、推測ですが世の中の床屋離れがあり「理容師」を目指す人がいない分、美容師を目指す人が増えており、その傾向が年々進んでいるためだと筆者は推測します。
また、美容師の統計の中には「働いていない美容師」「元美容師」などが多分に含まれております。筆者の経験ですと、筆者が行くいくつかの飲食店の女性店員は「美容師免許持ってますが、今は飲食です」といった方が、非常に多く、離職率が高いのも業界の課題点です。
美容室が増え続ける3つの理由
では、なぜ美容室が増えているのでしょうか?筆者は以下の3つの理由があると推察いたします。
理由①キャリアのあるスタッフは独立・のれん分けをするから
まず、当然の理由ですが、美容師の多くの方は「独立・開業」を目指しております。そのため5~10年以上経験したキャリアのある方は、独立開業を考えます。独立資金を自分の貯金と「日本政策公庫」からの融資で独立する方が一般的です。
また、店舗によっては「のれん分け」を行う事業者もおります。このような背景から、一般の事業体と異なり、多くの方が独立開業を目指すのが、美容業界の特徴のひとつであるため、店舗が増え続ける要因の一つなのです。
そして、美容業界の雇用環境の悪さが、そもそも独立を助長している側面があります。給与は他の業界と比べて安く、また拘束時間が長いのが特徴で、週休1日といった美容事業者も珍しくありません。
そのため、キャリアを積んだ美容師のキャリアは
①そのままがんばる
②転職して別の業界へ
③独立・開業を目指す
という三つの選択肢になり、特に独立して、一儲けしようと考えている方が多いのです。
理由②理容室(床屋)に行く人が減っており、その分美容室の需要が増えている
そもそも、理容室、いわゆる床屋に行く人が減っております。下記のニュース記事を引用すると
「若者にとって理容室はおじさんが行く場所、ダサイという先入観があり、実態を理解してもらえていません」
このようなイメージが10代から40代の男性に浸透しており、年々床屋に通う人が減りつつあります。その受け皿となっているのが「美容室」なのです。
このため理容室が減る一方で、美容室が増え続けている背景があるのです。
理由③ネット集客が進んでおらず、商圏によるマーケティングが中心であるため
美容業界では、インターネットやホームページを使った、マーケティングが浸透しておらず、あらゆる業界の中でも、特にITの利用が遅れている業界です。ネットを使った集客は「ホットペッパー」などのメディアだのみのため、自分達でホームページを活用した集客を行うノウハウがありません。
そのため、客数を増やして事業を拡大するためには自店舗の客数を増やすことよりも、店舗を増やして売上を増やす、商圏を中心にした考えをする事業者がほとんどのために、店舗拡大がやむことがないのです。
美容業界の5つの課題
それでは、美容業界にはどんな課題があるか?5つに分けて解説します。
課題①雇用環境の改善
美容業界は、あらゆる業界の中でも特に雇用環境が悪い業界です。
①平均給与が284万円と安い
②昇給がなかなかしない
③社会保険に加入できない事業者も多い
④肉体的にハード
⑤営業時間後も練習があり拘束時間が長い
⑥週休1日が当たり前
まず、平均給与ですが普通のサラリーマンの平均給与が400万円ということを考えると、284万円はかなり安いと言わざるを得ません。
参考記事:美容師・理容師の年収
見習いともなると、月の給与が13万円~15万円というのは珍しいはなしではありません。そして給与が安いだけなら、まだしも、厚生年金の加入していない事業者が多く、スタッフは自分で国民健康保険に加入しなくてはなりません。
また、朝8時に出勤し、帰るのは22時を超えることも珍しいことではなく、非常に大変な業界なのです。このため、離職率が非常に高く、せっかく美容免許を持っていても、他の業界に転職する方があとを絶たないのです。
課題②過当競争
美容室は、全国にコンビニの店舗数の4倍以上あり、あきらかに過当競争です。このような状況になると1店舗あたりの売上は下がり、従業員の給与もますます上がりにくくなります。
下記をご覧ください。下記は平成17年を100として場合の消費者物価指数です。
これを見るとあきらかですが、2005年よりも、2015年の方が、顧客一人当たりの売上が下がっており、特に単価の高い商品であるパーマに関しては6%も下がっております。これはあきらかに、店舗数が増えることで、過当競争が生れ、値下げ競争が起こっているのが大きな要因です。
課題③美容業界の古い慣習
美容業界の古い体質にも問題があり、むしろこのことが全ての課題の根っこの部分ととらえることができます。例えば、美容業界の経営者の多くは
「若いうちは修行のため、営業時間後も練習だ!」
「休日も練習しろ!」
「コンテストに出場しろ!」
などと思っている方が多いのですが、ブラック企業問題や、働き方改革が重要視される現代においてはあきらかに時代に逆行しております。また、現在はインターネットで、誰でもなんでも情報収集できる時代になりましたから、美容業界に興味がある若者も「美容業界は大変だ!」ということがわかるので、入ってくる人も減ってくるはずです。
また、現在の日本では全ての業界で人手不足になっており、これからは全ての業種で人材の取り合いになっております。こういった古い体質を業界全体で改善していかないと、市場規模を高めることもできません。
なぜならば、美容業界というのは基本は「労働集約型」のビジネスモデルであるため、従業員の数によって売上が比例してしまうからです。
課題④専門学校で技術が身についていない
そもそも、専門学校を卒業して美容師の免許を取得しても、美容師として一人前になるには、早い人で2年、遅い人は30歳近くになっても、シャンプーしかやらせてもらえないという方もいるのです。
なぜ、このような差が出るのでしょうか。やはりお客さんの髪を切れるようになるには「数多くの実践の経験」が必要なのですが、専門学校中では、座学の授業も多く、自分の友達の髪を積極的に切ったり、あるいは専門学校を通っている最中から、インターンシップのような形で、お店で働くなど経験を積まないと技術が身につかないのです。
こういった問題もあり、美容業界で一人前のスタイリストになるためには、時間がかかるため、1~3年であきらめてやめる方も非常に多いのです。
課題⑤ITやWEBシステムの利活用
さらに、美容業界はITやWEBの利用がかなり遅れています。ホームページを持たずに運営している美容室もあったり、あるいは開業したときにホームページをつくったままになっている事業者も珍しくありません。
ホームページの良いところは、即時に情報を伝えられるところなのですが、自分達でホームページを更新技術もないため、うまくホームページを集客に活用することができないのです。
そうなると、ホットペッパーなどの媒体だのみになりますが、ホットペッパーなどの比較媒体を利用すると、価格にシビアな顧客が増えるデメリットもあり、また、多くの美容室がホットペッパーに掲載しており、ホットペッパー内で過当競争が発生しております。
また、エクセルを使った各管理システムなども、今はGoogleドライブのように、スマホでもPCでも無料で使えるツールがあり、このような無料ITツールを使えば、業務効率は劇的改善するのですが、そういった無料で導入できるITツールそのものを知らないため、昔ながらのツールを利用していたり、あるいは紙で管理していたりと、業務効率が極めて悪く、労働環境を悪くしている一因なのです。
まとめ「とにかく労働環境の改善をすべき!」
多くの業界が「AI」や「ロボット」によって、仕事が奪われる中、美容師の変わりは、IT化するのは困難であり、今後も数十年にわたって社会になくてはならない業界の一つです。
しかし、その美容師の成り手がいなければ、店舗の売上をあげることもできません。ですから、美容室の経営者は、まず、労働環境を改善し、美容師が働きやすい環境を作ることが大切です。
経営者ご自身は、過去に厳しい修行の成果で、スキルを得て、独立開業した歴史があるので、若い人にも同じことを強要してしまいがちですが、日本は少子高齢化社会に突入しておるため、人材の確保が非常に大変です。
そのためにも、まずは労働環境を改善することから始めるべきだと思います。
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